ハワイの島々それぞれにペトログリフを見つけることができますが、その数が最も多いのは、なんといってもハワイ島Big
Islandです。ハワイ島はご存じのように、火山活動の活発な島なので、パホエホエと呼ばれる、表面が滑らかでかつ柔らかい、
ペトログリフのキャンバスとして最適な熔岩が多数存在していることが、数の多さのゆえんかもしれません。
ここでは、その中でも代表的な場所をいくつかご紹介します。
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「ハワイの大自然を楽しむ本」(河出書房新社)より抜粋加工 |
【PU'ULOA】
マウナ・ロア火山、キラウエア火口の南海岸に近いこの地に、ハワイ中で最も多くのペトログリフが集中しています。
チェーン・オブ・クレーター・ロードを海岸近くまで下がったところから西に向かってペトログリフ群があります。
キラウエア火口から流れ出たパホエホエ熔岩をキャンバスにしたものですが、いかんせん、キラウエアは今でも活発に
活動しているため、新しい熔岩に呑み込まれてしまったペトログリフもあるようです。1997年8月の噴火のときには、
この地にあった有名なワハウラ・ヘイアウも熔岩に埋もれてしまいました。
PU'ULOAという名前は「Long life」という意味で、昔、赤ん坊が生まれたときはこの地にPIKO(へその尾)を納めて、
子どもの長寿を祈念したそうです。
また、この地は広くは「Puna」という、古代ハワイの中心地だった地域に属しますが、Punaの地を歩くことは、
ヒロのモクオラ(現ココナツアイランド)の回りを泳ぐことと、キラウエア頂上のペレの家に登頂することと合わせて、
古代にはハワイ島3大ヒーリングの1つとされていました。
【PUAKO】
この地のペトログリフは限りなく線描に近く、そのため、ハワイでも最も古いタイプのものではないかと言われてい
ます。場所はサウス・コハラのマウナラニリゾートの敷地の中で、現在、ホテルによって厳重に保存・管理されており、
ペトログリフ散策ツアーなどのプログラムが提供されています。トレイルの入り口には、ペトログリフのレプリカが
用意されており、訪れた人達が記念に拓本など取れるようになっています。
無闇に手を触れてはいけない本物のペトログリフのほうは、Kaeoという名前のついた古い小径に沿って分布しています。
ちなみに、Kaeo、とは勝利者、という意味で、イースター島で行われていた、「毎年最初の軍艦鳥の卵を見つけるコンテストの
優勝者」を記念して彫られたペトログリフ、のことを指しているとのことです。
また、昔、カメハメハ大王がハワイ統一を祈願して、敵対していたケオウアを生け贄としてプウコハラ・ヘイアウに
捧げましたが、その後、ケオウアが再埋葬されたのがこのPUAKOの地だということです。
【ANAEHO-OMALU】
ここのペトログリフ群は、PUAKOから約4マイル南、ワイコロア・ビーチ・リゾートの所有するゴルフ場の隣にあります。
内容的には、点と円で構成される記号のようなものが多いのが特徴で、昔、クックの第3次航海に随行していたWilliam
Ellisは、このデザインのペトログリフについて、それらは、土地の支配者と、その支配下にある人数を示しているの
ではないか?と推測しています。
彼は主としてPU'ULOAのペトログリフをもとに推測していたようで、ANAEHO-OMALUは見ていないらしいのですが、
この地のペトログリフを見ていれば、より一層、確信を深めたかもしれません。
【KA'UPULEHU】
コナ・ビレッジ・リゾート内にあるここのペトログリフは、大変ユニークなデザインであるとのことです。
見学するには、事前に、週2回開催される見学ツアーへの申し込みが必要です。
【KALOKO-HONOKOHAU】
カイルア・コナの少し北、KALOKO-HONOKOHAU国立歴史公園の中にあります。年代的には比較的新しいものが多く、
完全に艤装した船を描いたようなものが見られます。
【KAHALU'U】
カイルア・コナの約5マイル南にあるここのペトログリフは、ハワイ島で最も容易にたどり着ける場所にあります。
(ただし、潮がひいていれば、の話ですが)。公園の管理事務所から海に向かって熔岩が緩やかな下り坂になっており、
主として人間の姿を描いたペトログリフが多く見られます。
【ハワイ島以外の島々のペトログリフ】
オアフ、マウイ、カウアイ、モロカイ、ラナイ、そして無人のカホオラウェ島に至るまで、ペトログリフが見つかっています。
ただし、ハワイ島以外の島では、柔らかいパホエホエ熔岩がそれほどふんだんにあったわけではないので、
ペトログリフは、洞窟の壁とか大きな石の表面などに苦労して彫られたものが多いようです。
【ナハ・ストーン】
大きな石(boulder)といえば、場所は再びハワイ島に戻りますが、ハワイ島東側のヒロ市の公立図書館の庭に
「ナハ・ストーン」という有名な石があります。この石はその昔「Makaliinukikualawalea」という長い名前の族長によって、
わざわざカウアイ島ワイルア川河口から運んで来られたもので、「ナハ」と呼ばれる王族階級の人間しか触れることができない、
という強力なカプがかけられていました。ハワイ全島を統一することになるカメハメハが、少年時代にこの石を
(数トンはある玄武岩です)見事に持ち上げた、という有名な伝説がありますが、意外と知られていないことに、
この岩の上部にも見事なペトログリフが彫られているのです。