その後もヒイアカ一行は、人食い鮫マカウキウを退治し、モオの戦士マヒキを退け、
パナエワ以上の実力を持つといわれるモオ、モオラウに勝ち、再びヒロの村の方向に
逆進して最後のモオ、ピリアとノホアをも倒して、とうとうハワイ島からモオを
一掃してしてしまったのです。
はげしく寄り道をしてしまった一行は、次にマウイ島へ渡るべく、急いでコハラまでやってきました。
しかしあいにくの嵐で空も海も荒れ模様。マウイ島に渡る船がありません。みんなが途方にくれていると、
1人の男が声をかけてきました。名前はパキイ。なかなかの男前で、嵐がおさまるまでの間、
とりあえずみんな自分の家に来て休んだらいい、と言ってくれます。
パキイはとても誠実な男性だったので、みな喜んで彼の申し出を受け入れました。
ただ、パウオパラエはどうも様子が変です。なんと彼に一目惚れしてしまったようです。
嵐が止み、一行が出発することになったとき、パラエは泣き始めました。「パキイと一緒にここに
残りたいが、ヒイアカとワヒネオマオを2人だけでカウアイに行かせるのは忍びない。
どうしたらいいのかわからない。」と泣いているのです。
ヒイアカは、「ここに残って幸せになったらいい。ここで、私達の成功を祈ってて」と言って
オマオと2人で出発することにしました。
マウイ島にわたる船の中で、船頭のピイケアヌイ・ピイケアイキ兄弟がヒイアカたち2人に
下品に言い寄ってきましたが、なんとか言いくるめてマウイに到着します。
2人はすっかり疲れてしまいましたが、パウオパラエの声がどこからともなく聞こえてきて、
2人を元気付けます。
■■
マウイについたヒイアカは、ペレたちと離れてマウイに住んでいる姉カポを訪問しましたが、
あいにく留守のようです。その帰り道、暗い顔をした精霊がヒイアカたちの前に現れます。
しかもよく見ると、手はあるものの指がありません。聞くと、名前はマナマナイアカルエア。
人食い鮫にやられて死んでしまい、また、指も食いちぎられてしまったというのです。
「鮫にやられた場所はどこ」?と聞くと、すぐそこの岩場だとのこと。見ると、まだ岩場の
上に、生々しい死体が乗っています。「あれならまだ生き返らせることができるかもしれない」
とヒイアカ。ワヒネオマオにも手伝ってもらい、マナマナイアカルエアの精霊をスカートに
くるみ、岩場に向かいました。そして、死体がきれいな状態であることを確かめると、
ワヒネオマオと掛け合いでチャントをうたい始めました。
生き返ることによって体の痛みも同時に戻ってきますのでマナマナイアカルエアの精霊は
少し抵抗しますが、それでも最後には足の裏から体の中に入り込み、見事に生き返ったのです。
ところが、この再生を遠くからじっと見つめていた精霊たちがいました。少し昔、
悪業を働いたために反乱が起こって滅ぼされたカウラヘア王の一族の精霊です。
彼らはヒイアカたちに「俺たちも生き返らせろ」と迫ってきます。
ヒイアカたちが「きれいな体が残っていないと再生はできない」、と説得してもまるで
聞く耳を持ちません。逆に、「誰のからだでもいいからとにかく生き返らせろ」と脅してきます。
ヒイアカたちは、どにかく逃げることにしました。逃げるにあたっては、ワヒネオマオと
一緒に煙の姿になって、文字通り、カウラヘア王たちを煙に巻いての逃走したのです。
2人はカアナパリに到着し、なんとかモロカイ島に行くという船に乗り込むことができました。