カネの水~カネの水の秘密

しかし、あまりに毎日なので、ナマカはしつこく問いただし、アウケレが、兄弟達の 死を悲しんでいたことを知ります。そして、ナマカもアウケレに、「カネの水」の 秘密を教えてくれたのです。

「カネの水」、それは蘇りの水であり、死んだ人々を元に戻すことができる水です。 しかし、その水があるといわれる場所は非常に遠く、また厳しく見張られているため、 手に入れるのは容易ではないどころか、生きて帰って来られるとは思えません。

だから本当はあなたには教えたくないのだけれど・・とナマカは悲しそうです。

アウケレは、絶対に生きて帰るから心配するなと言い残し、魔法のひょうたんを手に、 ナマカに教えられたまま、まっすぐに太陽ののぼる方向に向かって飛んでいきました。 来る日も来る日も飛び続け、途中、一度は方向を逸れて別の島に到着してしまいますが、 ひょうたんの中で目を覚ましたロノ神が忠告してくれ、方向修正して、やがて、カネの水 があるといわれる大洞窟の入り口に到着したのです。

洞窟の入り口には門番がいて見張っていましたが、アウケレが暫く話してみると、なんと この門番はアウケレの親戚だったことがわかりました。門番も、とたんに態度が変わり、 親切に、「洞窟の中に入ったら竹のはえていない側を進むんだ。竹をゆらすと、大きな音が して主人のカモホアリイが目を覚ますからな」、と教えてくれました。

そのとおりに進んでいくと、やがてまた門番が守る入り口がありました。ところがこの 門番もまたアウケレの親戚。彼は、「入り口を入ったら、ラマの木のはえていない側を進 むんだ。この木をゆらすと大きな音がして主人のカモホアリイが目を覚ますからな」と 言います。

またもやそのとおりに進んでいくと、またまた門番が守る入り口に着きます。そして またまたこの門番も親戚。彼は、「椰子の木のはえていない側を進むんだ。この木をゆらすと 実が落ちてきて大変な音をたてるからな。それから、泉のそばまで行くと、1人の、盲目の おばあさんがいて、いつもバナナを焼いている。彼女は誰かが近づくと見境無しに、 カパ打ちの棒で打ちかかってくるから気をつけないといけない。しかし、心配することはない。 なんとかして彼女に近づいて挨拶しろ。何しろお前は俺の親戚ということは、彼女の親戚 でもあるわけだから、きっと力になってくれるはずだ」と言います。

アウケレは教えられたとおりに、カパ打ち棒をかわしながら、なんとか彼女に近づいて 名乗りました。「おやまあ、そういうことかい」と態度が変わる老婆。
聞けば、カネの水を汲む入り口はすぐそこにあるようです。しかし、入り口はあまりに 小さくて、どう考えても通れそうにありません。いったいどうやったらいいのか、と訊くと、 「入り口からひょうたんを差し入れて、中にいる妖精たちに頼めばいいのさ」とのこと。 「いつもご主人のカモホアリイはそうやっている。でも、カモホの手は色黒でひょうたんも 真っ黒、それに比べてお前は色白で、持ってるひょうたんも白っぽいねえ。これじゃ 妖精をだますわけにはいかないねえ。」と、本当に盲目なのかと思えるようなことを言います。

しかし老婆は一計を案じ、バナナの灰をククイの油でといた真っ黒な液体をアウケレの手と ひょうたんに塗りつけます。「これで何とかなるんじゃないかい?」

アウケレがおそるおそる黒い手で、黒いひょうたんを穴に差し入れると、中から声がします。
ご主人様、お食事ですか?」。しゃべると声でばれるので黙っていると、
「それでは、カヴァ酒ですか?」これも黙っていると、
「ああ、それではカネの水ですね」と、ひょうたんに水を注いでくれました。

ページトップへ戻る