
ハワイを含むポリネシアの伝説は、だいたいどれも共通のモチーフを持っていることが多いのですが、この「凧」に関する伝説は、ハワイならで
は、のもののようです。
あるときマウイはひふと閃くモノがあって、家よりも大きな凧を作り上げます。オロナの木の繊維からつむいだ長い「凧糸」でそれをあげようと
いますが、なかなかうまくいきません。どうも風による揚力が足らないようです。
思案したあげく、そういえば、ワイピオ渓谷にいる、カレイイオク、という僧侶が昔、カラバシュの器の中に風を閉じこめたことがあるのを思い
出します。その容器は「イプ・マカニ・ア・カ・マウマウ:(calabash
of the perpetual winds)というのですが、マウイは、その蓋を開けて、ハワイ島ヒロのワイルク川沿いに風を吹かせてくれないか、と頼みます。
カレイイオクは承諾し、ヒロの地に、山に向かって強烈な風が吹きました。凧を持ったマウイは渾身の力をこめて踏ん張ります。(このときのマ
ウイの足形が、今でも溶岩の上に残っているそうです)凧は高くあがり、天まで届きます。マウイは大喜び。風はますます強く吹き、母ヒナが作
ってくれた布地は無事だったものの、オロナの凧糸はとうとう切れてしまい、凧は遙か彼方、山を越え、カウ(Ka-u)のほうまで飛んでいってしま
いました。腹を立てたマウイは、わずか数歩で14000フィートの山を越え、50マイル向こうのカウまで凧を拾いに行ったそうです。
一部始終を見ていた人々は、あることに気づきます。そう、マウイの凧、ハワイ島のどこからでもよく見える凧を見ていれば、それが天気予報に
なるのです。凧が元気よく上がっていれば、その日は快晴で風も強く、躊躇無く、カパの布地を干せるのです。
マウイもあることに気づきました。この凧をマウイ自慢のダブルカヌーに装着し、うまい具合に操縦すれば、素晴らしい速さで島から島へと移動
できるのです。
・・・やがて時がたち、半神マウイもとうに亡くなりました。しかし、マウイが島をつり上げた釣り針は今でもワイルク川の側の溶岩の上に横た
わり、その側にはダブルカヌーの痕もあります。また、マウイの凧は、今のマウナケアとマウナロアの間の肥沃な平地になっている、ということ
です。