ペレがハワイ島に定住するまで
意外?かもしれませんが、ペレはもとからハワイにいたわけではありません。カラカウア王の著作、「Myths and Legends of Hawaii」によれば、
ペレの家族は、11世紀頃にサモア(タヒチという話もある)から渡ってきたとされています。
ペレたちがサモア(ということにしましょう)に住んで楽しく暮らしていたある日のこと、ペレに天啓がひらめきます。
天啓によれば、彼女は、いくつかの島を巡った後、ハワイのニイハウ島に行き、そこの女王に会うことになるらしい。
両親はこれを快く承諾し、妹のヒイアカになる卵をもってゆけ、と言います。兄のカモホアリが立派なカヌーと乗組員を用意してくれ、
まずは、ニイハウ島に到着です。
ニイハウ島では歓迎されたものの、ペレが住むには、あまりにも「水の多い」島だったようです。
彼女はパオア(Pa-oa)という穴堀機を持っており、これは彼女が住みやすいように「火口!」を掘り起こすという物騒な道具なのですが、
隣のカウアイ島に行っても、また、その他いろいろな島に行っても、「どこを掘っても水が出てくる」ことにさんざん手を焼いたあげく、
やっと住むことができたのが、ハワイ島のキラウェアだったそうです。
ペレのハワイ移住経路。火山活動の歴史と一致していることがよく指摘されます。
姉:ナマカオカハイとの戦い
しかし、安心するのもつかの間。旅のあいだに卵は無事孵化し、美しい妹ヒイアカが誕生していました。また、ペレの兄弟姉妹たちもペレに続いて移住してきていたのですが、姉ナマカオカハイの夫、アウケレヌイアイクが、ペレとヒイアカの美しさに心を奪われてしまい、2人を無理矢理自分の妻にしてしまいます。これを知ったナマカオカハイの怒りは凄まじく、アウケレヌイアイクは早々にどこかへ消えていってしまいます。
ナマカオカハイの怒りは、今度はペレを向きます。ペレは、兄カモホアリイの助けを得ながら島から島へと逃げて逃げて、結局、カウアイ島まで逃げ延びます。ところがペレの持つパオア、これは地面と反応するたび、煙を上げてしまうのですが、なんとその煙を、500kmもはなれたハワイ島から、ハワイ島でもっとも高いマウナロアから見張っていたナマカオカハイに発見されてしまいます。ナマカオカハイは即座にカウアイ島に急行、ペレを身動きできないほどに痛めつけて、「もう死んだ」と見なして、意気揚々とハワイ島へ引き上げます。
ペレは、虫の息ではあったものの、実はまだ死んではおらず、熱い火口を求めて、オアフ島のダイアモンドヘッドから、マウイ島のハレアカラ火山へと逃避行をはかり、そこで、エネルギー回復、再びパオアを使い始めます。しかし、これがまた発見されてしまう。ナマカオカハイは今度は素手で戦いを仕掛け、ペレを八つ裂きにした上、その骨まで粉々にしてしまいます。(ハレアカラ付近には今でもNa-iwi-o-Pele(ペレの骨)という地名があるそうです)
ペレの葬儀は残りの兄弟達によってしめやかに執り行われましたが、結果、彼女のウハネ(Uhane:霊魂)はハワイ島マウナロアに立ちこめるように落ち着くことができ、以後、ハワイ島での火山の女神として定住することになったということです。
ちなみに、ペレ以前には、キラウェア近辺にはアイラアウ(Ai-Laau)という凶暴な男の神がいたらしいのですが、ペレの最初の到着と同時に、一度も戦わぬまま、尻尾を巻いて逃げ出したそうです。