ハワイの神話と伝説~英雄マウイ~ワイルク川のヒナ

マウイ島にも戦跡として有名なワイルクがありますが、ここでいう「ワイルク川」は、ハワイ島、マウナケアとマウナロアの雪解け水を源流とし 、ヒロの近くに注ぎ出ている、豊富な水量を誇る川です。

ハワイ島の方のワイルク川の河口近くに有名な「虹の滝」があり、この滝の奥の大きな洞窟に、マウイの母、ポリネシアの月の神ヒナが住んでい ました。また。この川の遙か上流(現在のワイクナ地方のことです)の河床には、クナ、という怪物が住んでおり、ことあるごとにヒナにちょっ かいを出していました。
  レインボー・フォール
クナは滝壺めがけて大きな石や丸太を流し、それらがヒナの洞窟にダメージを与えるのを楽しんでいたのです。しかしヒナはあまり気にしていま せんでした。

というのも、滝の両側は切り立った崖で、容易に近付けるものではなかったし、正面の滝を越えてやってくる侵入者は、簡単につかまえることが できたからです。

従って、彼女の唱えるチャントは、クナが攻撃を仕掛けて川の水があふれそうになっている最中にも決してとぎれることはありませんでした。

クナはますます怒り狂い、とうとうワイルク川を堰き止めて、ヒナを水責めにしようという凶行に及びます。彼は持てるすべての力を使って、河 床という河床を埋め立てていきます。大量の土砂が滝壺に投げ入れられ、ワイルク川の水位はどんどん上昇しはじめます。

やがて水位は洞窟の入り口まで達し、そしてついには住居の床をぬらし始めます。ヒナは逃げようにも、洞窟の入り口にはヒナをやっつけてしま おうと、虎視眈々と狙っているクナが待っています。

ヒナは、マウイに助けを求めます。何度も何度も、彼女の声は洞窟を抜け、外の嵐を抜け、マウナケアの山裾から海峡を渡り、マウイ島ハレアカ ラ火山に住む、息子マウイのところまで届きます。ヒナの叫びをきくや否やマウイは大急ぎで山を下り、カヌーに乗ると僅か2漕ぎで海峡を渡り 、あっと言う間にワイルク川の河口に駆けつけます。(この河口に今でもマウイのダブルカヌーの後が残っています:Ka-waa-o-Maui:The canoe of Maui)

カヌーを降りると、マウイは、あの、太陽をつかまえてやっつけたときに使った魔法の棍棒を手に取り、ぶんぶん振り回しながら干上がった河床 を走り抜け、あっと言う間にダムを破壊してしまいました。せき止められていた川の水は一気に流れ出し、ヒナは窮状を逃れました。

ダムが壊れる音を聞いたクナは、慌てて逃げ出します。クナはワイルク川の河床のあちこちに秘密の隠れ家を持っており、その1つに姿を隠しま す。が、マウイは長い槍を用意して、川岸からそれを溶岩を貫通させて突き刺し、クナをあぶり出します。(マウイが槍を突き刺した場所は今で も
Ka-puka-a-Maui:The door made by Mauiとして残っています)

クナは次々と隠れ家をわたり歩き、ついに、もっとも深い河床の穴に逃げ込みます。マウイはここで、焼けただれる溶岩を流し込む、という荒技 を繰り出します。クナはたまったものではありません。川の水は沸騰し、クナはとうとう死んでしまいました。(クナが死んだ場所は今でも Boiling Potとして有名ですね)

ヒナと娘たちは喜びのチャント、マウイへの賛辞のチャントをいつまでも詠み続けたということです。

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