オアフ島の北西にカエナ岬(Kalae-o-Kaena)という場所があり、その岬の沖合にカウアイ岩(Pohaku-o-Kauai)という、
家ほどもある大きな岩があります。
これはその2つの由来についての物語です。
昔、カウアイ島で、ある赤ちゃんが誕生しました。この子が生まれるとき、雷鳴がとどろき、大雨が降り、その大雨で
流れ出した赤土が川や滝を赤く染めたことから、血の雨が降ったのでは?と言われたほどです。
やがて雨がやみ、虹が見えました。その虹は、時間がたっても消えることが無く、よく見ると、なんと生まれたばかりの
赤ちゃんから虹が発しているのでした。
この子はハウプ(Hau-pu)と名付けられました。子供の頃から異様に力が強いので有名でしたが、長じてからは向かうところ
敵無し、という勇猛な戦士に育ち、その恐ろしさはハワイ中で知らない者がいない程でした。
彼はカウアイ島の東側、30マイルほどを隔ててオアフ島に相対する場所の近くに住んでいました。ある夜、
彼が眠りにつこうとすると、なにやら騒々しい音が聞こえます。気のせいか?と思っていったんは再び眠りについた
ハウプでしたが、やはり物音で目を覚まします。彼は決意して立ち上がり、外に出てみました。すると、沖合のほう、
オアフ島に向かって無数の光りが見え、騒々しい音はどうやらそこからやってくるようでした。まるで、無数の兵士が
攻め込んで来るようにも見えます。
ハウプは切り立った崖の上まで駆け登り、笑いながら大きな岩を持ち上げると、それを何度も何度も前後に振って勢いを
つけ、えいやっとばかりに沖の方に投げつけたのです。
沖に出ていたのは、カエナという名前の、オアフ島の族長の1人でした。彼はたくさんの仲間と連れだって沖に夜の漁に
出ていたのでした。仲間が仲間を呼び、結果、無数のカヌーが、無数のたいまつをともして海に出ることになりました。
海の上はもうお祭り騒ぎです。この騒ぎが海峡を渡ってハウプを眠りから起こしてしまったとも知らず、彼らは網を投げ、
たくさんのカヌーでそれを囲みながら、どんどん中心の1点へと網を絞り込んでいきます。
と、ちょうどそのとき、彼らの上空に大きな鳥のようなものが見えました。見る間にそれは大きくなり、山のように
見えたかと思うと、お祭り騒ぎをしていた彼らの頭上に、まともに落ちてきたのです。カヌーの囲みの中心にいたカエナはじめ、
多くの人々が死んでしまいました。この岩が海に落ちたときの衝撃で、オアフ島の西海岸には沖から押し寄せた砂が堆積して
新しい岬ができ、カエナ岬と名付けられました。
ハウプが投げた岩そのものは海に沈んだのですが、あまりにも大きな岩だったので、全部が海中に没することはなく、
上半分は、嵐が来ても大波が来ても海の上に姿を出したままでした。誰言うこともなく、この岩のことをカウアイ岩と
呼ぶようになったと言うことです。