13世紀頃の話です。時代もこのあたりまで来ると、年代も結構正確になってきます。当
時のオアフの酋長の息子に、モイケハとオロパナという兄弟がいました。当時、大航海時
代の話はすでに伝説に近いものになっていましたが、2人の兄弟は胸をときめかせて伝説
の航海の話を聞き、いつかは自分達も航海に出たいものだと考えていました。
やがて2人はたくましい若者に成長し、ついに、仲間を引き連れ、さらに甥っ子のラアも
連れて勇躍、タヒチに向けて出航したのです。しかし、彼らはまずハワイ島の、王家伝説
の地ワイピオに立ち寄ります。ここは非常に暮らしやすかった場所のようで、オロパナは
ここで結婚してしまい、みんな肥沃な土地で楽しく暮らしていました。ところがある年、
ワイピオで大飢饉が発生、にわかに本来の目的を思い出した一行は5隻のカヌーを仕立て
て出航します。
タヒチでオロパナはすぐに頭角を現し、まもなく酋長に就任します。モイケハとオロパナ
はどうもここで喧嘩になったようで、モイケハはオロパナと甥のラアも残して、ひとり、
ハワイに戻ってしまったのです。ただし、このときモイケハには、伝説の星の航海士カマ
フアレレ、風の使い手ラアマオマオが同行していきました。
モイケハが戻ってきたのはカウアイ島です。そこでは酋長プナ王が、王女ホオイポの結婚
相手を選ぶためのカヌーレースがまさに始まる直前のときでした。近くの島に置かれた、
髪の毛で鯨の歯を編みこんだネックレスを取ってくる競争でしたが、モイケハは迷わず飛
び入り参加します。
しかしみんながスタートした後も、モイケハはなかなか出発しようとしません。やがて他
のカヌーが水平線の向こうに行ってしまった頃、おもむろにひょうたんを取り出したのが、
風の使い手ラアマオマオです。ものすごい大風と共に飛ぶように進むモイケハ。たちまち
トップに躍り出て見事に優勝をさらったのです。
モイケハはめでたく王女と結婚し、のちにカウアイの王として名を残します。風の使い手
ラアマオマオはその後モロカイ島で本当に風の神となったということです。