フラ・ハラウとはフラ・スクール、という意味ですが、ここで取り扱うハラウは、古典的
なハラウを想定しています。商業ベースではなく、酋長の保護のもとに組織されていた時
代のハラウについて、そこで行われていた儀式を中心に解説していきます。
ハラウによって、しきたりは結構異なることもあるようですが、本章では、フラの研究者
として第一人者といわれるナタニエル・エマーソンの"Unwritten Literature of Hawaii"
に準拠して解説します。
この本は、1909年の初版発行後、再版重版が重ねられ、現在でもソフトカバー版とペー
パーバック版が販売されており、画面の写真は2003年発行のソフトカバー版です。
また、本章で説明するメレはNona BeamerのNa Mele Hulaも参考にしています。(下図)
■フラ・ハラウの建設
ハラウを建てるにあたって、まずは場所の選定が一大事でした。選定のための儀式もあっ たようですが、普通は「お告げ」によって場所が決まったといいます。一般的には、人
里 はなれた場所で、道行く人々が迂闊に覗き込んだりできない場所に建てたとされます。
初期の頃、フラはハラウ・ワア(wa'aはカヌー)という、カヌー小屋で教えられていまし
た。これはカヌーの製作や保管などに使われていた場所で、オープンなつくりになってい
ました。それが、時代が下がるにつれて、フラ・ハラウでの教義も秘密性が高くなったた
め、四方がおおわれた、フラ・ハラウという独自の建物へと進化していったようです。
また、ハラウの建設中も、フラの訓練中と同じくらい厳格なカプが敷かれ、無駄なおしゃ
べりをしてはいけない、とか、禁欲は絶対、とか、死体などの穢れたものは、触ることは
もちろん、見てもいけない、などの掟がありました。
もしも万一、穢れたものに遭遇してしまった場合は、まず海水で禊をし、次に海水にウコ
ンまたは赤土を溶いて作った聖水で身を清めることになっていました。
ただし、厳しいとはいえ、生贄をささげるようなものでは無かったようです。