その頃、もとリロア王に仕えていた2人のカフナ、ヌヌとカコヘという老人が、ある決心を
していました。2人は色々な功績もあり、リロア王からは重用されていたのですが、
ハカウは2人を、年寄りの役立たずと決め付けて、ろくに食事も与えなかったのです。
2人はハカウ王のもとを離れ、カオレイオクを頼っていこうと決めてワイピオを
出発したのでした。
2人が自分の家に向かっていることを事前に察知したカオレイオクは大喜びで、
ある作戦を立案して実行に移します。それは、ウミの偉大さと寛大さを2人に
アピールするためのもので、次のようなものでした。
2人を迎える宴席の用意をあらかじめほとんど終わらせておき、ウミ1人を残して
全員が外出します。訪ねて来た2人は、家に残っていた男が「少々お待ちください」
と言うやいなや驚異的なスピードで食事を整えるのにびっくり仰天します。
これまで満足に食事も与えられていなかった2人が、豪勢な料理と酒ですっかり
気分良くなっていたところに、旧友カオレイオクを先頭に、160人もの人々が
列をなして次々と家に戻ってきます。カオレイオクの指示で、行列は背の高い順に
ならんでいたので、遠く後ろのほうの人たちは、実際よりももっと遠くにいるように
見えます。
やがて、最後に、一番偉いウミが戻ってきました。その顔を見て2人はまた仰天。
なんとさっきまで自分達に料理を作ってもてなしてくれていた男ではありませんか。
ウミという名の男がハカウ王から追放されていたことは、2人は聞いて知ってはいましたが、
そのウミがこんなにも立派な男で、こんなにも豊かな土地を見事に治めていたとは
知らず、しかも、そのウミから直々に料理をもてなしてもらったことに2人は
感激してしまいました。
そしてその恩返しに、2人はハカウ王を滅ぼし、ハワイ島全体をウミに捧げることを
約束したのです。
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しばらくカオレイオクの家に滞在していた2人は、ある作戦を持ってワイピオに戻ります。
王室に入った2人はハカウ王に至急の面会を求め、「あなたが追放したウミが武装して
戦争の準備を整えている。緊急事態だ。」と告げます。
そして、戦争を無事に切り抜けるためには厳格なカプを敷かないといけない、と
ハカウ王を丸め込み、次々と儀式を執り行っていきました。
カプの最後の日は、ハカウ王1人を残して全員山にこもって祈りを捧げないといけない、
という、普通に考えれば奇妙なカプも、それまで続けてきた儀式の勢いで
粛々と実施されていきます。
この、最後のカプの日に合わせて進軍してきていたウミ。とはいえ、いきなり軍隊を
踏み込ませるようなことはせず、捧げ物を持った行列に見せかけてワイピオの崖を下り、
王の屋敷の庭に集結させます。見たことの無い行列がやってきたのをいぶかしむハカウ王に
ヌヌとカコヘは「あれはハカウ様への貢物を持ってきた村の人々ですよ」と答えて
誤魔化し、全員が揃ったところでみな一斉に変装を解き、ハカウを打ち殺してしまった
のでした。
こうしてウミは、ハワイ島全土を治める王となり、カフナ、カオレイオクは国の
主任神官となったのです。また、ハカウの暴君ぶりには人々も辟易しており、彼の死を
悲しむものはほとんどいなかったということです。
ウミは即位後、ハワイ島全体を、カウ、プナ、ヒロ、ハマクア、コハラ、コナという
6つの地方にわけて、家来に分配しました。このときの地方区分は、21世紀の
現在でもそのまま使われています。
これまで苦労を共にしてきた3人の仲間と、世話になったカオレイオクは、それぞれ
広大な領地を持つ酋長となったのです。また、ヌヌとカコヘにも「倒れるまで走れた
距離」の分だけ土地を分配してやりました。ヌヌはアフプアア2つ分、カコヘは
1つ分のアフプアアを手に入れることができました。