ハワイ島全土を安定させたウミが、次に考えないといけないのは対外政策、すなわち
すぐ隣のマウイ島の動向です。当時のマウイ王ピイラニには、ピイケアという名の美しい
娘がいました。ウミは彼女と結婚して、マウイ王朝との間を安定させようと考えたのです。
ウミには、浪人時代にもうけた娘と息子がいましたし、リロアの娘、彼の腹違いの姉
であるカプキニも娶っていました。しかし、ここでマウイ島からピイケアを「正妻」
として迎えることにしたのです。
結婚申込みの使者には、信頼の厚いオマオカマウが立ちました。豪壮なカヌーを
仕立ててマウイに向かうオマオカマウ。その立派なカヌーに、マウイ側からは、
「これは戦争の始まりか?」と疑われもしましたが、結婚申込みとわかって一安心。
求婚は喜んで受諾され、20日の後、嫁ぐことに決まりました。
結婚当日は、なんと400隻のカヌーがマウイからワイピオへ。花嫁の到着と同時に
虹が祝福し、ウミとピイケアは幸せに暮らしたということです。
ウミの治世の間、義理の父でもあったマウイ王ピイラニとの間は良好でした。
しかしピイラニの死後、マウイ島には内乱勃発します。ウミはその鎮圧に名を借り、
マウイ島をも支配下におく大王となったのです。
ウミはハワイ島カイルアでその波乱に満ちた生涯を閉じました。
その遺体は旧友コイが密かにマウイ島のどこかに葬ったのだと言われています。
------------
ウミの正妻となったマウイのピイケアについてはちょっとしたエピソードが伝えられています。
ピイケアはウル王朝直系の非常に高貴な生まれであり、ピイケアの母は
「ライエ・ロヘロヘ・イ・カ・ワイ」というオアフに住む女神で、また、祖母のハプウと
カライハウオラはそれぞれ神の力を持っていたといいます。
女神ライエロヘロヘイカワイはピイケアの子供を欲しがり、オアフに連れて行って
自分が育てるのだとウミに伝えてきました。しかし、そんなことをウミが許すはずが
ありません。いちおう、「次の子供ができたら、あなたに預けましょう」と、はぐらかし
続け、決して子供を渡すことはありませんでした。
ところがそのうち、ワイピオで謎の事件が始まりました。村の人々が、何の前触れも無く、
突然倒れて死んでいくのです。
その原因がライエロヘロヘイカワイにあると見破ったウミは、なんと神を相手に決闘を
申し込みます。さすがに相手は神ですから決して死ぬことは無く、ウミは負けを認めざるを
得ませんでした。ところが決闘の最中に、祖母のハプウが、ちょうど誕生した新生児を
誘拐してオアフに連れて行き、謎の殺人は止んだのです。