■マナの受け渡し
カフナは強いマナを持っていたといわれますが、「ハ」、といわれる儀式によって、マナ
を渡したい相手の口またはひたいに息を吹きかけてマナが伝授されたといいます。また、
カフナだけでなく、一般庶民でも一生に一度、死ぬ間際には同様の儀式によって子供に
マナを渡すことができました。ただし、カウワという被差別階級の人々はマナは全く無い
とされていました。
唾液は、マナを運ぶことができる、重要なものでした。
あるとき、ロノという名前の酋長が、カマカというカフナに、「お前はもうすぐ大怪我を
するぞ」と予言されました。いきなりそんなことを言われたロノは全く信用していません
でしたが、その直後、自分の持っていた鍬で足を強打、血がどくどく流れたのです。カマ
カはすぐに手当てしてやりましたが、ロノは全く恐れ入り、「どうかあなたの能力を分け
てください」とお願いします。カマカはロノの口に自分の唾液を分けてやり、結果、ロノ
は予知能力を持つことができたというのです。
■マナの喪失
適性のある職業に就かなかった場合に、神によってマナが剥奪されるのは前に述べたとお
りですが、適職についていても、「正しく」仕事を行わなかった場合にはやはりマナは消
えていきました。その極端な例はカフナ・アナアナという暗殺請負人です。うっかり別の
人間を殺してしまったり、あるいはアナアナの神への祈りを怠ったりすると、天罰覿面、
マナが消えていったとされます。文字通り、人を呪わばアナ2つ。ということのようです。
患者を見捨てたヒーリング・カフナ、農作業をさぼった農夫、あるいは日々の神への祈り
をさぼった人々もマナが消えるとされましたが、これらは、ひょっとすると、日常生活の
秩序を守るための方便だったのかもしれません。
■マナの操作とホオカラクプア
マナを操作するのはもっぱらカフナの仕事でした。カフナ・アロハは、さとうきびにマナ
を吹き込んで恋愛を成就させ、カフナ・ラアウは薬用植物にマナを吹き込んで効能を高め、
カフナ・アナアナは木のかけらにマナを吹き込んで呪いをかけたのです。
こうした、マナの操作全般、あるいはマナを発揮することをホオカラクプアと呼びます。
(Ho'okalakupua。英語ではmagic、と訳される)。強いマナによって、例えば信じられな
いほどの量の魚を釣り上げることもホオカラクプアであったし、マナを操作し、通常は祈
りを行って、驚くべき結果が得られることもホオカラクプアといいます。
残念ながら現在ではその方法はほとんど失われているが、溶岩の上を歩いたり、空を飛ん
だり、さらには一度死んだ人間を蘇らせるなどの技術もあったといいます。
死者の魂は、元に戻すにあたっては足の裏から行ったといいます。また、魂は、いったん
体から出てしまうとその開放感が嬉しくてなかなか自らは元に戻ろうとしないので、結構
苦労した様子がヒイアカ神話などに残されています。