ヒイアカの悲劇~カウアイ。ロヒアウの蘇生

翌日、2人はマラエハアコアも連れてロヒアウの住んでいた村へ。 ロヒアウが既に亡くなっていることはわかっていたので、まずは、彼の遺体を安置 していると思われる自宅に向かいました。

応対に出てくれたのはロヒアウの姉のカフアヌイ。彼女は遠いハワイ島からやってきて くれたヒイアカたちをねぎらってくれますが、ロヒアウのことを尋ねると涙ぐみます。 聞くと、彼の遺体はモオの魔女、キロエとカラナマイヌウが奪っていってしまい、 ここには遺体は無いとのこと。

たぶん、山の奥深い洞窟に隠しているのではというカフアヌイの言葉を頼りに、ヒイアカ 達はさっそく山に入ります。相当奥深くまで来たところで、山頂近くの洞窟が遠くに見え、 そこまで長いハシゴがかけてあるのも見えます。

と、キロエたちもヒイアカたちに気がつき、あっという間にハシゴははずされてしまいました。 これでは崖を登っていくしかありません。しかし崖はあまりに長く、途中まで登ったところで 日が暮れてしまいそうになります。ヒイアカはここでまた祈りのチャントを歌い、 太陽の動きを一時止めて、なんとか洞窟までたどり着いたのでした。

キロエたちの力はヒイアカたちには遠く及ばず、ほとんど戦わずして逃げ出していって しまいました。そして、洞窟の奥でロヒアウの遺体を発見。しかし遺体は、傷などは無い ものの、時間の経過でかなりいたんでいます。これを復元するのはヒイアカといえども 至難の業です。

遺体を清めるのも難しい仕事ですが、蘇生のためには厳密で厳格なチャントが必要であり、 決して邪魔されたり覗き見されたりしてもいけません。また、ロヒアウの精霊はつかまえても つかまえても、隙を見ては逃げ出そうとするためこちらも気を許せません。

まずヒイアカはマラエハアコアを呼び、「村に戻って人々を集め、決して彼らが山を 登ってきたりしないよう、10日間連続でフラを踊らせておくこと」を命じます。

そして、オマオに、遺体のための芳しい花を集めさせ、自らは精神集中して今から はじまる長い祈りに備えます。 このチャントは本当に難しく、言葉を少しでも間違えたり、さらには、唱えるスピードが 少しでも早すぎたり遅すぎたりしても、蘇生は失敗してしまうのです。 それは、例えて言えば、弓で的を射るときに、矢の調整、射る人の技量、風向き全てが 完璧でないと矢が的の中心を射抜かないのと同じです。

長い長い祈り、一瞬の気の緩みも許されない祈りがはじまりました。 オマオも真剣にヒイアカの成功を祈っています。 しかし、さすがのヒイアカといえども、一度では成功しません。 2度め、3度目、やり直すたびにロヒアウの遺体は瓢箪に入れた水で清められます。

そして、長い長い祈りの果て、ついにロヒアウは目を覚ましたのです。 ただ、意識は回復したものの、ロヒアウはまだ体が動きません。 ヒイアカは、神々の力を借り、また、ロヒアウ自身の声にも元気付けられて 再び長いチャントを唱え、とうとう、ロヒアウは完全なからだで回復したのです。

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