太古の昔、クアイヘラニという、天を支えているところに、イクという名の酋長がおり、
妻カパパイアケアとの間に次々と男の子が生まれていきました。
子供たちはみな元気良く、ボクサーやレスラーとしてその実力を発揮していましたが、
父親はいまひとつよろこんでいないようで、幼いときの彼らを抱いてやることもありませんでした。
ところが、11人目の男の子、名前はアウケレ・ヌイ・ア・イク、この子が生まれたときは違いました。
イクはアウケレに特別な才能や勇気があることを感じ取り、この子を溺愛するようになったのです。
イクが年老いて酋長を引退するときには、兄達をさしおいてアウケレを跡取りにするという
宣言までしてしまいます。その後、末っ子となる12人めの男の子には、父親と同じイクという
名前がつけられますが、アウケレが一番、というのは変わりませんでした。
兄達は当然、面白くありません。あるとき、彼らが浜辺でボクシングやレスリングに興じていると、
ちびっこのアウケレが、自分も仲間に入れてもらおうと顔を出しました。
兄達は、いい機会だからいじめてやろうとアウケレを仲間にいれ、ボクシングの試合を
したのですが、こともあろうに兄達は小さなアウケレに手も無く負けてしまったのです。
浜辺に集まった人々も、小さなアウケレが勝つのを拍手で応援し始め、兄達は怒りと恥ずかしさで
真っ赤になって引き上げました。