ポリネシアの神話と伝説~マケマケとイースター島の鳥

かつて、マタヴェリ島には多くの人々と彼らの神々が住んでいました。人々は常に争い、戦争状態で、殺し合い、また、相手の肉を食べていました。なぜなら、マタヴェリ島にはあまりにも食べ物が少なく、常に奪い合いの状態だったからです。彼らの主食は魚でしたが、どれも酸っぱく、彼らはいつももっとおいしいものが食べたいと心から願っていました。

その頃、島のはずれの洞窟に1人の尼僧が住んでいました。彼女は、不思議な髑髏を持っており、その髑髏でさまざまな予言をしたり、人々の苦しみを和らげたりすることができたのです。この髑髏は、島そのものができたときからそこにあったようでした。彼女はそれをとても大切に扱っていました。

ところがある日のこと、島に大嵐がやってきました。巨大な波がうち寄せ、その一部は彼女が住む洞窟までも届き、あっという間に髑髏は海の彼方へ流されていってしまいました。彼女はすぐに海に飛び込み、必死で髑髏を追いかけます。しかし、髑髏のほうはまるでわざとやっているかのように、手が届きそうになった瞬間、物凄い速さで流れていったのです。

髑髏も彼女も海の上を漂い続け、そしてとうとう、マチロヒヴァ、という島の海岸に打ち上げられました。彼女は最後の力を振り絞って髑髏をつかもうとしましたが、そこで気絶してしまいました。

目を覚ますと、彼女は驚きました。1人の男がじっと彼女の方を見下ろしていたのです。彼は「お前は誰だ?なんでこんなところにやって来たのだ?」と訊きます。
「髑髏をさがしているんです。」と尼僧。
彼は不思議そうに彼女を見つめます。「あれは髑髏なんかじゃない。マケマケという神様だ。私はハウアという者だが、今からマケマケに仕えることになる。」そう言うと、彼は髑髏を拾い上げ、島の特別な場所に連れていってしまいました。

このマチロヒヴァの地で、マケマケは髑髏から抜け出して、神の形となり、いつもハウアと一緒にいました。彼らは2人で魚を捕ったり、狩猟をしたりしていました。マケマケは特に鳥肉を食べるのが好きでした。なぜなら、かつて住んでいたマタヴェリには鳥は1羽もいなかったからです。

マケマケは、尼僧にもしょっちゅう鳥肉を分けてくれました。ある日、彼女はマケマケに「どうしてあのマタヴェリには、こんなにおいしい食べ物になる鳥がいないのかしら?」と尋ねました。マケマケはその問いに答えることはできませんでしたが、ハウアに「一緒にマタヴェリに鳥を連れていってみないか?あの地の人々は大層喜ぶに違いない」と誘いかけました。

マケマケとハウアは一群の鳥たちを連れてマタヴェリに行ってみました。たしかに、島の人々は大喜びでした。彼らはマケマケとハウアに何度も礼を言いましたが、あまり常識というものがありませんでした。つまり、あっという間に全ての鳥を食べ尽くし、またまた飢餓状態に陥って、もう一度マケマケ達が訪れてくるのを心待ちにしはじめたのです。

数年の後、マケマケ達が鳥たちの様子を見にマタヴェリを訪れましたが、当然鳥は1羽も残っておらず、マケマケは呆れてしまいました。そこで2人は、もう1度鳥の群を連れていき、村人を集めて説明します。「いいか、みんな。鳥というのは、卵を産むんだ。だから、卵を産む前の鳥を食べたりしちゃいかんのだ。わかったな?」

村人達は深くうなずきました。ほどなく、鳥たちは巣作りを始め、たくさんの卵を産みました。しかし村人達にはこれがどういうことなのかわかりません。そんな中、1人の村人が「卵そのものが実においしい」ことを発見したものですから、人々は先を争って、鳥だけでなく、卵も食べ尽くしてしまいました。そうしてまた、マケマケ達の来訪を待つ日々が始まったのです。

さらに数年の後、マケマケはハウアを誘って鳥たちの様子を見にやってきました。ところが、やはり1羽の鳥も見あたりません。2人は村人をつかまえ、「おい。鳥に卵を産ませてやれ、と言っておいたのがわからなかったのか?」と詰問します。村人は、「わかってましたとも。鳥たちは卵をいっぱい産みました。本当にありがとうございました。卵があんなにおいしいものだとは思わなかったです。」「なんだって!?お前達、卵を食ったのか!??」

2人はあきれ果てて、途方に暮れてしまいました。「あいつらには、先の ことを考えるということができないんだ。どうしようもない奴らだ。どうしたものか。」と悩みます。そのうち、ふと、名案が浮かびました。

2人は再び鳥の群を連れて来、今度はマタヴェリの島でなく、島の対岸にあるモツヌイ、という小さな険しい無人島に放しました。ここで鳥たちは安心して巣作りができると同時に、時折マタヴェリ本島のほうに飛んでいった鳥だけが村人達のご馳走になる、という段取りです。


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このとき以来、イースター島では、その年最初の鳥の卵が見つかったことを記念する祭りが始まりました。その卵を見つけた男は頭に卵を載せてマタヴェリまで泳いで帰るのです。彼はその年の「バードマン」として栄誉を得、残りの卵達は誰も触れることなく、無事に孵化することができたのです。

画像出典:http://sorrel.humboldt.eduより マタヴェリ島からモツヌイ島を望む

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