首尾よく水を手に入れた嬉しさに、アウケレはひょうたんをひったくると
大急ぎで引き返します。門番たちの忠告も忘れ、椰子の実を落とし、黒檀の木を揺らし、
竹の葉をバサバサ落としながら脱兎のごとく走り去りました。
当然、カモホアリイは目を覚まします。水の番人の入口のところに来て「誰か来ただろう?」
と問いただします。「先ほどご主人様にカネの水を差し上げたところじゃありませんか」
と応える妖精たち。
「水を奪われた!」とカモホアリイは怒ってアウケレの後を追いかけます。
物凄いスピードでしたが、アウケレのほうが一歩だけ速かった。大洞窟の出口から
間一髪、カモホアリイの手をすり抜けて大空に飛び立つアウケレ。逃げ切ったのです。
一目散に島に戻ったアウケレは、ナマカへの挨拶もそこそこに、船の沈んだあたりに向かい、
ひょうたんの水を注ごうとします。
大慌てでとめるナマカ。「水の使い方が違う!」と叫びます。
「いいからここは私に任せなさい」、といい、ひょうたんの水を手のひらにたらし、その手で
海の水をかき混ぜるように水をなじませていきます。「あとは、待つだけよ」とゆっくりと
と岸辺に戻り、後ろを振り返ると・・
なんと、なつかしいダブルカヌーが、来たときのままの姿で現れてきたのです。
船の上では兄達と、そしてカウマイが手を振っています。
長い間暗い海の底にいた兄達。彼らは自分たちを救い出してくれたアウケレをこころから敬い、
その後はみんな幸せに暮らしたということです。