鳥たちから、「奴らの仲間が1人、海岸に泳ぎ着いているようです」という報告を受けたナマカ。
ひねりつぶしてやろうと出かけていきましたが、アウケレの持つ才能を見抜き、また、彼の
容姿も端麗であったことから、アウケレを許してやるどころか、なんと彼と結婚してしまったのです。
しばらくの間、2人は幸せな暮らしを続けていました。
ナマカはアウケレに、自分の知っているさまざまな魔法も伝授してやりました。たった1つ、
空を飛ぶ魔法を除いては。もしもこの魔法を知られたらアウケレは飛んで逃げ帰ってしまう
のではないかとナマカは心配したのでした。
ナマカには何人もの兄がいました。彼らはみな気さくな人たちで、アウケレにも気さくに声を
かけてくれます。そんなある日、「アウケレよ、空を飛ぶことはできるようになったか?」と
聞きます。そんな魔法は全く教えてもらっていなかったアウケレが「そんなことも
できるようになるんですか?」と聞き返します。
「そうか、ナマカはお前が逃げていくのが心配で教えてないんだな。じゃあ、俺達が
こっそり教えてやろう。彼女には内緒だぞ」と、秘密の特訓をしてくれます。
最初はなかなかうまくいかず、何回も墜落しては大きな音を立て、「いったい何事か」と
ナマカがやってきますが、そのたびに兄達が「いや、レスリングの練習だよ」とか、
「いや、ボクシングの稽古だ」などと言ってごまかしてくれたのです。
そしてついに、アウケレは自由自在に空を飛ぶ術を身につけたのでした。
そんなある日、アウケレは夢を見ました。夢の中では、彼の甥のカウマイが悲しそうに
泣いています。そう、彼は兄達と一緒に海の底に沈んでいたのです。
いったん思い出すと、日々悲しみは消えません。ナマカも気にしてわけをききますが、
何しろ直接の原因はナマカのせいなので、アウケレもあいまいにしか答えません。