祖母の予言どおり、航海は苦難に満ちたもので、いつまでたっても陸地は見えず、やがて
食料も水も底を尽いてしまいました。
アウケレ自身は、おばあさんにもらった魔法の葉を舐め続けており、また、それをカウマイ
にも分けてやっていたため、2人だけは元気でしたが、残りの兄たちは餓死寸前です。
兄達は航海に出てからもずっとアウケレをいじめ続けていましたが、死にそうになっている
兄達を見てアウケレは同情し、彼らにも魔法の葉を分けてやりました。
長い漂流の末、船はやっとある島の近くにたどり着きます。そして船の周りに鳥達が飛んで
きてしきりにさえずり始めます。実はこの鳥達は島の恐ろしい女酋長、ナマカオカハイの家来で、
「お前達は何しに来た?」と彼らにきいていたのです。
アウケレは「単に観光に来ただけだ」と伝えようとしましたが、兄がそれを制止し、
よせばいいのに、「俺達はこの島を征服するために来たのだ」と高らかに宣言したのです。
アウケレは兄達に「この島はとても危険だ」と忠告したものの、彼らは全く聞く耳を持たず、
アウケレを臆病者とののしるばかりです。絶望したアウケレは魔法のひょうたんを手に、
船から飛び降り、ひとり泳いで島に向かいました。
ようやく岸にたどり着き、沖を振り返ってみると、自分達が乗ってきた大きなダブルカヌーは
跡形もありません。ナマカオカハイが一撃で海に沈めてしまったのでした。