ハワイの火の女神ペレのライバルポリアフ

ハワイで、「雪」の女神、というのは場違いかもしれません。しかし、ご存じの人も多いと思いますが、ハワイ島ビッグアイランドにはマウナケア、という標高4000m級の火山があり、山頂には万年雪があります。冬ともなれば(ハワイにも一応、冬があるのです)スキーヤーも訪れ、朝は山頂でスキー、午後は下界でビーチという生活もできます。また、山頂には空気の透明度や年間晴天日数の多さから、日本の「すばる」を始め世界各国の天文台が並んでいることでも有名ですね。
雪の女神ポリアフ
それはさておき、ハワイ島には4人の雪の女神が住んでいました。リリノエ、ワイアウ、カホウポカネ、そしてもっとも有名なのがポリアフです。以下、ポリアフのエピソードを2つ、ご紹介します。




【エピソード1:カウアイ島での結婚式】
カウアイ島にアイオヒクプア、という身分の高い族長が住んでいました。ある日のこと、ハワイ島のハマクア海岸沖を通りかかったところ、大変美しい女性、ポリアフが海岸の岩に腰掛けているのを見かけます。彼女のほうも大変優美に手招きをしてくれ、彼は衝動的に結婚を申し込みます。ポリアフは婚約の印に、互いのマントを交換しようと言うのですが、アイオヒプクアは、大急ぎでカウアイ島へ戻り、白いマントと大変美しい鳥の羽のヘルメットで再び現れただときには、2人の結婚のための大勢の従者や楽隊を連れてきたのです。彼はポリアフはじめ、4人の女神全てから歓待され、一大祝宴が催された後、今度はカウアイ島で祝宴を催すべく、2人はハワイ島を発ちます。

ところが、アイオヒクプアはマウイの女王にも同じように結婚を申し込んでいたのでした。怒った女王は結婚祝宴の最中のカウアイ島へ乗り込んできます。彼女は皆の前でアイオヒクプアの不実をなじりますが、アイオヒクプアの側近達はなんとか2人の仲裁をしようと企てます。それら一連の動きを冷ややかに見守っていたのがポリアフ。文字通り、冷ややかに見守り、しばらくするとカウアイ中が冷気に包まれます。あまりの寒さに女王はマウイに逃げ帰ります。それを見届けたポリアフは、今度はさらに冷たい、ほとんど凍死しそうになるような風をアイオヒクプア達に吹き付けた後、そっとカウアイ島から姿を消し、2度と戻ってくることはありませんでした。

【エピソード2:ペレとの出会い】
ポリアフは、マウナケアの東側斜面、ハマクアの近くに住んでいました。彼女もまた色んなスポーツが好きで、人間達も一緒になって、ホルアなどに興じていました。ある日のこと、彼女達の前に豪奢な美人の姿でペレが現れます。ポリアフは彼女を歓迎し、一緒にゲームを楽しもうとします。しかしペレは最初から、美しいポリアフに敵対心むき出しです。

地面は徐々に熱くなり、やがてマウナケアの斜面にも火口がいくつかできはじめ、ポリアフはあやうく白いマントを燃やしてしまいそうにもなります。地震も相次いで起こり、ペレの作る溶岩流があちこちを燃やします。しかし、そのうち、マウナケアの山頂に冷気を含んだ黒い雲が集まり始めます。ポリアフが呼び寄せた雪の雲です。雪は山頂あたりから始めて、どんどんどんどん積もります。とどまることなく降り続く雪。ペレの味方であった溶岩は冷たい岩になり、火口をちょうどふさいでしまって、いわばペレの敵になってしまいます。流れ出ていた溶岩流も次々と氷結し、それが現在のラウパホエホエの奇岩風景の起源だそうです。

ポリアフとペレはこれ以外にも何回も戦いを繰り返しますが、その都度、ポリアフの勝利に終わっています。しかし、ポリアフはペレをハワイ島から追放してハワイ島全土を統治しよう、などということは露ほども考えず、おおざっぱに言うと、マウナロア以南をペレが統治し、マウナケア以北をポリアフが統治する、という共存関係がずっと続いた、ということです。

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